ギター倒し
ギターを弾いていた。いや、ギターを倒していた。それで僕は競おうとしていた。誰と?大親友とだ。控室、僕のギター倒しはなかなかのもので、彼を凌駕するものだと思っていた。いざ、ステージに立った。昼下がりで窓の外の陽の光だけを取り込んだアンニュイな客席には、ギターを持った少女達が10人くらい散らばって座っていた。先攻は彼だった。彼は、その場の雰囲気に合ったアルペジオを披露した。なんとも物悲しいのに美しい。8小節終わった頃だろうか、僕は、だんだんと恥ずかしくなってきた。この後披露するギター倒しをどう断ろうか。即席で演奏できるスキルなどない。「さっき控室で練習していた時は、マットが敷いてあったんですが、ここは床が硬いからギターが傷付いてしまいますよね」と苦笑いしつつフェードアウトしようか。